統計’s Vol.08 Final

既成を塗り替える

フランスやスイスとの国境近く、ドイツ南西部にフライブルクという街があります。人口は宮崎市よりも小さく、都城市よりも大きい22万人。もう8年も昔になりましたが、筆者はこの街へ視察に訪れた事があります。その街の一角にヴォーバンという地区があります。38haあるフランス軍の駐屯地だったその場所は、1994年にドイツ政府へ返還。5,500人が暮らす住宅地として計画され、1997年より各工事がスタート。順次完成しながら10年の歳月を経てほぼ全てが完成しました。

1992年頃のヴォーバン
2012年頃のヴォーバン

フライブルクはドイツ南西部と言っても、北海道よりも高い緯度に位置しておりとても寒い地域。驚くべきことに建築された合計277棟ある住宅は、15kWh/m2以下のエネルギー基準値をクリアするパッシブハウスである事、また一部はソーラーパネルを搭載したプラスエナジーハウスであることです。どれほど高性能なのか説明が難しいですが、冬の凍てつく寒さに自宅に友人を呼んでパーティーさえすれば、料理する熱や人の発熱だけで暖房を必要とせずに暖かく過ごせると言えばお分かりいただけるでしょうか?計画から工事着手までに3年が掛かったという期間を含めると、今から約20年も前にこんな未来を考えていたのかと思うと当時の私はただ脱帽するしかありませんでした。

ヴォーバンの住宅に共通すること、それは設備を最後の手段と考えていること。とにかく高断熱化が最優先。どんな設備であっても家電製品と似たもので、使用期限があります。そんな“期限付きの快適”よりも長く持続できる快適をまずきちんと作る。これって今の日本と真逆ですよね。また極めつけは蛇口をひねるとお湯が出ること。当たり前のことですが、意味が違います。各家庭に水の配管とお湯専用の配管が繋がっているのです。つまり各家庭には給湯器がなく、森林などの伐採から出る木チップを燃やしてお湯と電気をつくるコージェネレーションで町のお湯事情を賄っているのです。ヴォーバンの町には路面電車が出入りするのみで基本的に自動車は入れません。カーシェアリングの制度が整っており、必要があればその車を利用しています。そのおかげで子供たちが元気に走り回って遊ぶ光景がとても印象的でした。

ドイツ国内でもいち早く発展していったフライブルクの建築は新たな指標となり、国内外を問わず世界中から視察者が訪れています。どこよりも先駆けて取り組み、幾多の困難を乗り越えながら未来を掴んだ人口22万人のそう大きくない街、「フライブルク」。衰退してゆく地方がある中、そのような行く末を感じさせないほど活気があり、笑顔と希望に溢れていました。ドイツ本土を日本に例えるならば、フライブルクは南九州あたりでしょうか。

こんな場所から国内の住宅事情に多大な影響を与えたとすれば、私たちももっと頑張れるはずだと思い日々取組んでいます。いろいろな視点から宮崎の暮らしにまつわる実情をお届けしてきましたが、統計’sは今回で最終回となります。

新しいニュースとして、タナカホームは2016年よりパッシブハウス・ジャパンに宮崎県唯一の住宅会社として加盟する運びとなりました。全国で様々な工法、技術でパッシブハウスやエコハウスを実現している皆さまと交流を図りながらタナカホームの家づくり、延いては皆さまへ更なる快適を提供できればと思っております。今後、新たな情報としてもご紹介できればと思っております。どうぞお楽しみに!

トップへ戻る