読みもの
性能にこだわるのは、性能を忘れてほしいから

「性能にこだわりのある会社」の本音
これまでのコラムでも語ってきたように、私たちタナカホームでは、工法面、法律面、コスト面……さまざまなハードルを突破して、パッシブハウスを全棟標準化しています。だからこそ、日本でも突出した「性能にこだわりのある会社」として注目を集め、全国から視察に来る住宅会社の方が後を絶ちません。
しかし、本音で言えば、「お客さまには性能の話をあまりしたくない」と考えています。まあ、こうしてコラムでいろいろな話を書いているので、「矛盾している」と思われてしまうかも知れませんよね。
ただ、今回のコラムを書くに当たって、この気持ちと向き合い直してみたら、「お客さまには性能のことを忘れてほしい」という想いがあることに気がつきました。今回のコラムは、この少し矛盾した私たちの本音について、お話しできたらと思います。
住宅業界の「性能競争」がもたらしたモノ
近年の住宅業界では、国による長期優良住宅の推進もあり、「高気密」「高断熱」「高耐震」「省エネ」「太陽光発電」……といった性能にまつわるキーワードがあふれ、各社でも数値競争とアピールに余念がありません。お客さまのリテラシーも上がり、業界全体での性能品質もかなり向上したのではないでしょうか。
しかし、こうした「性能競争」の中で失われたものもあります。それは、家づくりの本質的な部分を考える時間です。住宅会社もお客さまも、性能面に費やす時間や労力が増えてしまい、肝心の「性能の先」にある暮らし方や、住み心地をイメージする余裕が少なくなっているのです。
こんな言い方をしたら怒られてしまうかも知れませんが、そもそも、お客さまに性能の勉強をさせている時点でプロとしては不十分。お客さまがイメージできない数十年先まで見越して、「この性能で何の心配もありません」と言える、シンプルな答えを提示できてこそ、プロなのではないか……と常々思ってきました。
「全棟パッシブハウス標準化」というシンプルな答え
だからこそ、タナカホームは、日本の常識を遥かに超える高い性能基準を持つパッシブハウスを研究開発して、実現可能な費用で全棟標準化してきました。パッシブハウスの細かな性能については、別のコラムでもご紹介していますが、その特徴は、世界レベルで、他の会社や工法と比較する必要がない正真正銘の高性能住宅であること。
こうやって文章にすると「ドヤ感」が出てしまうかも知れませんが、私たちは自社の性能自慢がしたいのではありません。ただ、「ややこしい性能については私たちが先回りして研究開発しておいたので、お客さま何も考えなくて大丈夫ですよ!」と、まっすぐにお伝えできたらそれでいいんです。
「もう性能のことを考えなくていいですよ」
そう聞かされたとき、多くのお客さまは、半信半疑の表情を見せます。でも、私たちがつくってきたパッシブハウスを見て、そこにある居心地や空気感を感じたとき、少しホッとした、晴れやかな表情に変わっていきます。それはきっと、「性能から解放された」という安堵からくるものなのだと思います。
それだけ、家づくりにおける性能の話は、お客さまにとって重荷になっている。だからこそ、「全棟パッシブハウス標準化」という、シンプルな答えを示して、性能のことを忘れて、本質的な家づくりを思う存分楽しんでほしい……それが、私たち、タナカホームの願いなんです。